新学習指導要領(小学校教科書改訂)の基礎知識

学校で学んだことが、子供たちの「生きる力」となって、
明日に、そしてその先の人生につながってほしい。
これからの社会が、どんなに変化して予測困難になっても、
自ら課題を見付け、自ら学び、自ら考え、判断して行動し、
それぞれに思い描く幸せを実現してほしい。
そして、明るい未来を、共に創っていきたい。
2020年度から始まる新しい「学習指導要領」には、
そうした願いが込められています。
子供たちの「生きる力」を育むには、
学校での学びを日常生活で活用したり、
ご家庭での経験を学校生活に生かしたりすることが、
とても大切です。
お子さんが学校で学んだことについて、
ご家庭で、ぜひ話してみてください。
保護者の皆さまの働きかけが、
子供たちの「生きる力」を育む大きな原動力になります。

(文部科学省『新学習指導要領リーフレット』より)

新たに取り組むこと,これからも重視することは?

プログラミング教育

コンピュータがプログラムによって動き,社会で活用されていることを体験し,学習します。
コンピュータを活用した学習でプログラミング的思考を育みます。

外国語教育

「聞くこと」「読むこと」「話すこと」「書くこと」の力を総合的に育みます。

道徳教育

自分ごととして「考え,議論する」授業などを通じて道徳性を育みます。

言語能力の育成

国語を要として,すべての教科等で子供たちの言葉の力を育みます。

理数教育

観察,実験などにより科学的に探究する学習活動や,データを分析し,課題を解決するための統計教育を充実します。

伝統や文化に関する教育

我が国や郷土が育んできた日本の伝統や文化を学びます。

主権者教育

社会の中で自立し,他者と連携・協働して社会に参画する力を育みます。

消費者教育

契約の重要性や消費者の権利と責任などについて学習し,自立した消費者として行動する力を育みます。

特別支援教育

幼児期から高等学校段階まで,全ての学校で障害に応じた指導を行い,一人一人の能力や可能性を最大限に伸ばします。

それでは、具体的には小学校の学習現場で何がどのように変わるのかを検証していきましょう。やはり何といっても一番の大きな変化は新しい教科書が小学校の生徒全員に配られることです。2020年度から変わる小学校の教科書の特徴はどのようなものか、教科ごとに確認していきましょう。

教科別ポイント(英語)

いちばん大きな変更点は、新しい教科(英語)が加わるということです。まずは小学5・6年で教科になる「英語」について、制度上の特徴と新教科書の内容を詳しく見てみましょう。

小学校3・4年での「必修化」と5・6年での「教科化」

2020年度から、小学校において3・4年生は「外国語活動」の授業が必修化され、週1回、年間35回行われることになりました。また、小学5・6年生は、教科として成績が評価される「外国語(英語)」の授業が週2回、年間70単位時間行われることになり、新しい検定教科書が配布されます。

「外国語活動」の2技能3領域,「外国語」の4技能5領域

英語の能力を表す「聞くこと」「話すこと」「読むこと」「書くこと」の4つの力を4技能と呼びますが、このうち「話すこと」は「やり取り」する力と「発表」する力の2つの領域に分けて示されるようになりました。小学3・4年生の「外国語活動」では「聞くこと」「話すこと[やり取り]」「話すこと[発表]」の2技能3領域が、小学5・6年生の「外国語」では、「聞くこと」「話すこと[やり取り]」「話すこと[発表]」に加えて「読むこと」「書くこと」の4技能5領域が学習、つまり育成すべき力の範囲となります。

単語・連語・慣用表現について

新学習指導要領では、小学校において学習すべき単語の数は、3・4年生の外国語活動で取り扱う語も含め600語~700語程度とされています(現行の学習指導要領では語数の規定はありません)。連語(get up, look atなど)や慣用表現(excuse me, I see , I’m sorry, thank you, you’re welcomeなど)に関する数の規定はありませんが、いずれも身近で簡単なものを学習することとなっています。

ちなみに中学校では、小学校で学習した単語数(600~700語)に1,600~1,800語を加えたものが学習すべき単語数として規定されています(現行の学習指導要領での語数は約1,200語)。

つまり2020年度に完全実施される新学習指導要領では、現行の1,200語の約2倍にあたる2,200~2,500語を小中学校で学習することになるのです。

新しい教科書について

新しく小学校5・6年に導入される教科書は中学校の現ラインナップ(東京書籍・開隆堂・三省堂・学校図書・教育出版・光村図書)に1社(啓林館)加えた7社から発行されます。

  • 東京書籍…『NEW HORIZON Elementary』+ Picture Dictionary
  • 開隆堂…『Junior Sunshine』
  • 学校図書…『JUNIOR TOTAL ENGLISH』
  • 三省堂…『CROWN Jr.』
  • 教育出版…『ONE WORLD Smiles』
  • 光村図書…『Here We Go!』
  • 啓林館…『Blue Sky elementary』
発行者使用学年教科書番号書      名教科書判型ページ数
東書5501NEW HORIZON Elementary English Course 5A4106
 5,6502NEW HORIZON Elementary English Course Picture DictionaryAB50
 6601NEW HORIZON Elementary English Course 6A4106
開隆堂5503Junior Sunshine 5AB142
 6603Junior Sunshine 6AB150
学図5504JUNIOR TOTAL ENGLISH 1A4162
 6604JUNIOR TOTAL ENGLISH 2A4158
三省堂5505CROWN Jr. 5AB142
 6605CROWN Jr. 6AB138
教出5506ONE WORLD Smiles 5AB146
 6606ONE WORLD Smiles 6AB146
光村5507Here We Go! 5AB161
 6607Here We Go! 6AB163
啓林館5508Blue Sky elementary 5AB138
 6608Blue Sky elementary 6AB138

新しい教科書の特徴

  1. 単語と表現をまとめて学習し、単語を全て覚えるわけではない。(※中学英語のように紙面に新出単語が明記されていない。)
  2. 聞く,話すなどの活動により慣れ親しむ作り。(→リスニングの分量も多く、負担が大きいため親しみを持たせる工夫が必要。)
  3. 教科書に日本語があまり書かれていない。(→英語に抵抗感がある生徒の配慮も必要)
  4. 書かせる分量はさほど多くない。(特に単語。)
  5. 同じ表現を学習する際においても、使用される単語は異なり、英語表現の学習タイミングも教科書会社ごとに異なる。
  6. 4線の幅が違う(5:9:5、5:6:5)

中学学習範囲で小学校に移行する項目

※小学校の学習指導要領に新設されて,かつ中学校の学習指導要領から削除されたもの。

《文字・符号》
アルファベットの活字体の大文字,小文字
終止符,疑問符,コンマ,引用符,感嘆符などの基本的な符号
《文》
単文
肯定,否定の平叙文
肯定,否定の命令文
疑問文のうち,be動詞や助動詞(can,doなど)で始まるもの,疑問詞(who,what,when,where,why,how)で始まるもの
代名詞のうち,I,you,he,sheなどの基本的なもの
動名詞のうち活用頻度の高い基本的なもの
過去形のうち活用頻度の高いもの
《文構造》
SV     主語+動詞
SVCのうち 主語+be動詞+名詞[代名詞,形容詞]
SVOのうち 主語+動詞+名詞[代名詞]
《言語の使用場面》
挨拶

教科別ポイント(国語)

学習項目の増減について

実質的な内容に関しては大きな変更はありません。現行版の項目内容を大筋残しつつ、項目間の移動や学習指導要領全体の改訂方針に沿った新規事項の追加によって再編されました。

話や文章に含まれている「情報」の扱い方について、詳細に記されるようになり、例えば「光村図書」の教科書では目次に「情報」項目が新設され、思考法や資料の扱い方に関し、より大きく扱われるようになっています。

例1)・情報と情報の関係…原因と結果、意見と根拠、比較や分類、具体と抽象
   ・引用の仕方や出典の示し方
   ・情報の信頼性の確かめ方 など

これに関連して、図表の読み取りや文章と図表の関連(非連続テキスト)を読み取らせる指導が具体的に言及されるようになりました。また、「対話的な学び」への対応として、授業づくりに役立つような対話例が多く示されるようになりました。

学習項目の学習学年の移動について

〈小学校〉都道府県名に用いる漢字25字が、他学年から4年生に追加されました。
それに伴う学年間移動は下表のとおりです。(1~3年は移動なし。)

改訂前 改訂後 増減 移入数 移出数
学年別漢字配当表の漢字(教育漢字) 1006 1026 20増 20 0
4年配当漢字数 200 202 2増 25 23
5年配当漢字数 185 193 8増 21 13
6年配当漢字数 181 191 10増 11 1
中学校で新たに学習する漢字 1130 1110 20減 0 20

移動した漢字(中学から小4への移動+小学校の学年間移動)の総数…57字

その他

すべての学年で、話や文章の中で使うことを通して、学年に応じた内容の語句を増やし、語彙を豊かにすることが強調されるようになりました。

「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」のすべての領域で、学習の中で「自分の考えを持つ」ことが明確化されました。

教科別ポイント(社会)

  • すべての学年で地図帳や地球儀を使う機会が増えることになります。
  • 教科書の発行形態が変わり、これまでの「3・4年上」「3・4年下」から「3年」「4年」の学年別発行となります。
    また、5・6年は学年ごとの合冊と学年内で分冊とする対応に分かれました。
  • 3・4年の学習順が整理・変更されています。
  • 政治の働きへの関心を高めることを重視して、6年生の社会の学習順が歴史→政治・国際から政治→歴史→国際の順に変更になりました。
学年新指導要領内容
小3 「自分たちの市」についての学習が増加。
小3 「くらしの道具の移り変わり」の内容が拡充され、新たに、自分たちの市の様子の移り変わりとして学習。
小3 公共施設の役割を学習し、その運営に税が生かされていることを学習。 
小34年で地図帳を配布小3で地図帳が配布されます。
小33・4年下(実質4年)で学習地域の安全(消防・警察など)の役割を学習。
小4 都道府県の学習時期が2学期後半から1学期に変更されました。
小4「消防」と「災害」のいずれかを選択して学習。独立項目として自然災害から人々を守る活動を学習することになりました。
小43・4年上で学習「年中行事」と「都道府県の伝統行事」の内容が統合されました。
小6北方領土のみ学習。北方領土、尖閣諸島、竹島の学習が必修化。
小6歴史→政治→国際政治→歴史→国際の順に学習
小6地方自治→国政→憲法政治の学習順は憲法→国政→地方自治の順に学習
小6 オリンピックのみパラリンピックの開催について学習

教科別ポイント(算数)

領域「データの活用」の新設に伴う四領域の再編成

①学習領域が変更されました。

「A 数と計算」「B 量と測定」「C 図形」「D 数量関係」
「A 数と計算」「B 図形」「C 測定(1~3年)変化と関係(4~6年)」「D データの活用」

②領域として「データの活用」が新設され、統計的な内容が拡充されています。

小3「棒グラフ」で複数の棒グラフを組み合わせる、小4「折れ線グラフ」で複数系列のグラフや組み合わせたグラフ、小5「帯グラフ」で複数の帯グラフを比較する、小6「代表値」で平均値、中央値、最頻値を学ぶ(中1から移動)など、内容の充実が図られています。

「分数の乗除」,「単位量あたりの大きさ」でスパイラルの緩和

①小5「分数の乗除(分数×整数,分数÷整数)」が小6へ完全移動しました。

小5「分数の乗除」がなくなり,小6「分数の乗除」で一度に学習することになります。

②小6「速さ」が小5へ完全移動しました。

小5の「単位量あたりの大きさ」で「速さ」を学習することになります。

小4「ともなって変わる2つの数量の関係」で「簡単な割合」を新設

変化の様子を「折れ線グラフへの表現」から,「表,式,折れ線グラフへの表現」に深化され、さらに,別の数量との関係を比べるのに「簡単な割合」を用いることを学習します。

小6「メートル法」を各学年に分配

小3で「接頭語(k(キロ),m(ミリ))の意味」,その他の学年でも面積や体積とともに単位換算を学習します。

プログラミング的思考との関連

算数の教科書でプログラミング的思考を身につけるページが設定されています。中にはすべての学年でプログラミングを扱っている教科書もあります。

「活用」の拡充

身につけた算数の知識を,生活や身の回りの場面で活用することに重点を置いた学習を意識したページが増えています。

教科別ポイント(理科)

形式的な変更点

  • 東京書籍:AB判→A判
  • 教育出版:AB判→A判変形
  • 信州教育出版:B判→AB判

※他の3社は,AB判

発行者書      名教科書判型
東書新しい理科A4
大日本たのしい理科AB
学図みんなと学ぶ 小学校理科AB
教出未来をひらく 小学理科A4(変形)
信教楽しい理科AB
啓林館わくわく理科AB
発行者書      名教科書判型
東書新しい理科A4
大日本たのしい理科AB
学図みんなと学ぶ 小学校理科AB
教出未来をひらく 小学理科A4
信教楽しい理科AB
啓林館わくわく理科AB

話し合いを通じて気づきや疑問を深め合う学習モデルを提示

身の回りでみられる理科的現象について、児童が感じた気づきや疑問について話し合い、どのような実験・観察を行えばよいかを計画します。その計画にもとづいて行った実験・観察の結果を考察することにより、さらなる学習を進めていくことを提示しています。

「説明」(=表現力)を求める部分が増加

「思考力,判断力,表現力」の育成に向けて、実験・観察においては、その計画から考察までの一連のプロセスをさまざまな方法でわかりやすく説明することを通して、表現力を養成します。教科書でも、「現象や理由」を自分の言葉で説明する箇所が増加しています。

プログラミング的思考との関連

論理的思考力を身につけるための学習活動の一環として、小学校6年生では、すべての教科書の「電気」の単元で、プログラミング的思考を扱うページが新設されています。コンピュータにどのような指示をすれば、自分の意図した動作をコンピュータに行わせることができるかということが当該ページで扱われています。